合羽摺の用語集

この用語集は、合羽版と森義利の制作に即して、用語の読みと意味を説明しています。読みは、2026年の作成時点で分かる範囲のものです。読みや意味は、一般的なものや、ほかの工房での使い方と異なる場合があります。

合羽摺の用語

合羽
かっぱ|Kappa
ポルトガル語の“Capa”から生まれた語。元来は「外套」と同義で、ラシャや木綿の布地、桐油紙などで体形に合わせて作り、雨の日に衣服の上から羽織るもの。
合羽版
かっぱばん|Kappaban
版画の世界での呼称で、1746年(延享3年)には既に使われ始めている。直接手で行うので、「刷る」ではなく「摺り」を用いる。
合羽摺
かっぱずり|Kappazuri
合羽紙に描画して摺る技法。作品の最後の仕上げに墨色で輪郭をつけて摺る「骨線摺り」に多用された。
型染
かたぞめ|Katazome
英語:stencil dyeing
型紙を用いて防染糊を置き、色を差して染める染色の技法。森義利の制作では、下絵―型紙―型置き(糊置き)―色差し―隈取り―骨線摺り―水元の順で行う。
併用版
へいようはん|Heiyōhan
英語:mixed media
合羽版と型染版を一つの作品の中で併せて用いた版。森義利の技法の最も正しい呼称。英語ではステンシル・プリントと訳されるが、型置き(糊置き)や糊伏せの工程は表されていない。
直接法の合羽摺
ちょくせつほうのかっぱずり|Chokusetsuhō no kappazuri
英語:direct Kappazuri
型置きの時に糊置きをせず、型紙を直接紙の上に置いて色差しをする方法。
合羽紙
かっぱがみ|Kappagami
数枚の薄い和紙に柿渋を塗り、張り合わせて仕上げた強靭な紙。
渋紙
しぶがみ|Shibugami
英語:stencil paper
合羽紙のこと。柿渋で塗り固めて作られていることから、和染めでは一般にこう呼ぶ。
型紙
かたがみ|Katagami
英語:stencil
渋紙に下絵を貼り、刀で彫って作る型。作品の色数によって数枚になる。
主型
おもがた|Omogata
英語:key impression stencil
墨線となる型。色差しが終わったあと、墨による骨線摺りに使う。
摺り込み型
すりこみがた|Surikomigata
英語:color stencils
色板となる型。色別に色を摺り込むのに使う。
つり
Tsuri
英語:bridges
型がばらばらにならないよう、全体をつなぐ線。
寒冷紗
かんれいしゃ|Kanreisha
英語:Victoria lawn
薄く目の荒い布。紗張りに用い、型から離れてしまう形や線をつなぐ。
紗張り
しゃばり/しゃはり|Shabari / Shahari
彫り終えた型紙の表面に寒冷紗を置き、漆で塗り固めること。型紙を扱いやすく、より堅牢にする。
防染糊
ぼうせんのり|Bōsen-nori
英語:dye-resist starch
摺らない部分を覆う糊。餅米を挽いたものと米糠と塩を湯で練って蒸し、練り上げた糊に、生糠と石灰を混ぜて作る。現在は工場などで作られ、販売されている。
防染の糊置き
ぼうせんののりおき|Bōsen-no-norioki
和紙の上に型を置き、そのまわりに地紙の色を残すため防染糊を置くこと。型置きともいう。
色差し
いろさし|Irosashi
英語:color printing
摺り込み型を使い、色別に色を摺り込むこと。多種多様な顔料を使い、その上から植物染料を引くこともある。
隈取り
くまどり|Kumadori
英語:gradation
色に濃淡をつけ、ぼかしを入れること。
糊伏せ
のりぶせ|Noribuse
英語:reserve printing process
完成時に白く残したい部分や、色を差し終えた部分を防染糊で覆うこと。
墨入れ
すみいれ|Sumiire
主型を使い、型をはずして残された線描の部分に墨色を入れること。
骨線摺り
ほねせんずり|Honesenzuri
英語:skeleton print
作品の最後の仕上げに、墨色で輪郭をつけて摺ること。主型を使う。
水元
みずもと|Mizumoto
摺り込まれた紙を水に浸し、防染糊を洗い流すこと。
水張り
みずばり|Mizubari
摺り上がって濡れたままの作品を、板に貼って乾かすこと。

道具と材料

柿渋
かきしぶ|Kakishibu
英語:persimmon tannin
薄い和紙に塗って張り合わせ、合羽紙(渋紙)にする。
和紙
わし|Washi
英語:Japanese paper
合羽紙の材料。摺るときも、和紙の上に型を置く。
蜜ろう
みつろう|Mitsurō
英語:beeswax
下絵を渋紙に貼るのに使う。
刀
かたな|Katana
英語:stencil knife
型彫りに使う小刀。森義利は型彫りをこの刀一本で仕上げた。
漆
うるし|Urushi
英語:japan lacquer
紗張りで、寒冷紗を型紙に塗り固めるのに使う。
はけ
Hake
英語:brush
摺り込み型で、色別に色を摺り込むのに使う。
顔料
がんりょう|Ganryō
英語:pigment
色差しに使う。多種多様なものが使われる。
植物染料
しょくぶつせんりょう|Shokubutsu senryō
英語:plant dye
摺り込んだ顔料の上から引き、画面に独特の潤いを与える。
墨
すみ|Sumi
英語:ink
主型による骨線摺り(墨入れ)に使う。
餅米
もちごめ|Mochigome
英語:sticky rice
防染糊の元。石臼などで極く細かく、なめらかに挽く。
米糠
こめぬか|Komenuka
英語:rice bran
挽いた餅米、塩とともに湯で練り込み、糊にする。防染糊にするときは生糠も混ぜる。
石臼
いしうす|Ishiusu
英語:millstone
糊の元になる餅米を挽く。
山椒の木
さんしょうのき|Sanshō no ki
蒸した糊を鉢で練り上げる棒として、よく使われる。
石灰
せっかい|Sekkai
英語:lime
糊に混ぜ、のりの切れをよくし定着させる。

版画の四つの技法

凸版
とっぱん|Toppan
英語:Relief Print
最も古くから使われている版画の技法で、木版が代表的なもの。
凹版
おうはん|Ōhan
英語:Intaglio printing
銅版、亜鉛版、リノリュームなどの版上に針や彫刻刀などで凹面をつくり、彫った溝の中にインクをつめて刷る方法。
平版
へいはん|Heihan
英語:Lithography
油が水をはじく原理を用いた技法で、石版画(リトグラフ)が代表的なもの。
孔版
こうはん|Kōhan
英語:Stencil
孔は穴を意味する。各種の紙をくり抜き、その切り抜いた穴の上から筆で絵具を摺り込んでいく方法。森義利の合羽版はこの技法を使用している。